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No.19 日本、スペイン、ドイツ、オランダ。マルチカルチャー夫婦にみる生き方の基準。

さて、オランダはアムステルダムでの"働くと家族シリーズ"の2回目です。

※1人目のエントリーはこちらから

家族・子育て・仕事・趣味、それらを全て満足に得たいというのは誰もが願うことだが、そう簡単に実現できることではない。それでもそういう生き方をしたい欲張り系人材の1人として、多様性に満ちたこの街だからこそ、マルチカルチャーなバックグラウンドを持つ2人に「どのようにしてその実現にチャレンジしているのか?」そんな観点でインタビューをしてみた。

2人目は、いや2組目はSさんとYさん夫婦のストーリー。何が面白いってこの2人、日本、スペイン、ドイツを渡り歩き、今はアムステルダムで暮らしている。そんなマルチカルチャーな人生を、2人で歩んできた彼らのストーリーを聴いてみた。

Sさんはアメリカ人だ。日本で起業し、会社員としても働いたことがある彼は、スペインに渡りMBAを取得。ドイツではadidasのHQで4年ほどマーケティングを担い、ここオランダではアパレルメーカーで2年ほどマーケティング戦略担当を担っている。 ”働き方や、やりたい仕事は自分が選ぶ。誰かに強要されたり、その制約が好きじゃなかったら、辞めちゃうんだ。”

そう語るSさんは、様々な国で生きてきたからこその視点で、働き方の違いを”メンタリティ”の違いから紐解く。 「日本とアメリカは、理由は違うけど働き方が似てる。ただ、ヨーロッパは別物だと思う。」

日本では、互いに個人を尊重する。だからこそ一緒に働くことが大事。結果的に、オフィスに先輩が残っていると先に帰れないとか、人に説明するのに膨大なレポートを求められるような、メンタリティがそこに生まれる。 アメリカは、個人を尊重するのはそうだが競争社会。結果が全てだから、そのためには長時間働くことも余儀なくなる。勝ち負けをハッキリさせるから、プレゼンして、討論して、承認を得ることが求められる。 一方、ヨーロッパは個人に対して尊重と言うよりはウエルカムな部分が色濃く、何よりリラクゼーションを大切にする。少なくともドイツ、オランダではいかに効率的に仕事をできるか?が重要であり、9時〜18時、休日は仕事しない。そんなメンタリティがあるという。

このような”メンタリティ”の違いは、ワークライフバランスという言葉を使うなら、その働く環境の”考え方”に跳ね返る。 例えば、アメリカはデイケア、ハウスクリーニング、ベビーシッターなど、ワークライフバランスを支援するサービスが生活の周りに存在する。ただ、見方を変えれば、それだけのお金を投資できる人が使えるサービスであり、その人達に”より長く働いてもらう”ための考え方とも捉えられる。 一方の日本は、最近は共働きも増えてきているものの、男性は仕事、女性は家事育児といったメンタリティは色濃く残っている。そのため、”働く女性を支援する”ためのサービスとして、子育て支援や女性のキャリア支援が焦点になりやすい。 こうしたメンタリティや、そのメンタリティが形成する社会の環境そのものを変えようとするのは、一朝一夕では難しいだろう。その前提に立った時、「ワークライフバランスを最適化する時のKEYは何なのか?」その問いに対して、Sさんは”家族の在り方が全てだ”と答える。夫婦揃って脱サラしてまで家族で世界廻ってる僕が彼とハモったのは言うまでもない。

彼は自身の実体験から、こう続ける。 「日本の友達で、普通のサラリーマンから脱して(もしくは突き抜けて)何かを得ようとしている人は、離婚してたり、シングルマザーになっていたり、子どもがいない人が少なくない。それが悪いことでは全くないし、幸せは自分達が決めることだけど、なんでそういう人が多いのか?は、メンタリティも含めた環境要因も大きいんじゃないかな。」

”どれだけ家族(夫婦)が互いを理解し合えるか。自分達にとって大事なコトを、大事にできる選択ができるか” 自分達がどうしていきたいか?それは何が大切だからなのか?という会話こそが、外部環境はなかなか変えられなくても、自分達で生き方を決めていく上で重要な、当たり前のようで簡単ではないからこその、解決の糸口になるのかもしれない。

さて。そんな話を聞くと、嫁さんの話が聞きたくなる。 縁が縁を呼ぶとはこの事で、翌日訪問予定だったWeWork(コワーキングスペース)のオフィスで、奥さんのYさんが働いているという!!ということで、ちゃっかりYさんにも話を聞いてみた。

Yさんは日本人。Sさんとは日本で出逢った。 「広告業界で6年間、朝から晩まで働いて。。自分の人生、これで良いのかな?って」 休み無く働いた矢先のとある旅行先で、ふと気づいたのだそう。 彼女はSさんがスペインでMBAを取ると聞いて一緒に飛行機に飛び乗る。ちょくちょく広告業界から仕事をもらいつつ、その地に住むなら現地の言葉を話すべきだと、スペイン、ドイツ、オランダの各国で語学学校に通う。ここオランダでは、とある旅行会社で世界各国の支社と連携しながらWebデザインの仕事をしている。 非常にスマートなSさんの嫁さんだ。「スキルを磨いたから、どこでも働けるわ!」というバリバリ仕事志向の人かと思いきや、彼女は違う。 「仕事はありがたいけど、そんなにデザイン制作が好きなわけでも、旅行をこうしたい!みたいな情熱があるわけでも無いんですよ。そもそも仕事!仕事!ってタイプでもなくて。」

今は今で、気に入っている。 アムステルダムという生活のしやすい街で、彼が選び、好きで頑張っている今の仕事を応援したい。そんな正直な想いと並行して、自分の時間の使い方には新たな刺激を求めているようだ。 海外生活でマイノリティを味わったり、ムスリムだけどスカーフを被らないシリアの女性に会ったりなどして、自分の中の”当たり前が覆される経験”をすることが、彼女の中の世界を広げてきたのだ。 「たまに、もっと意義のある時間の使い方出来たらなって思うんです。ある島に行って、絶滅しそうな動物を助けるとか。」 そう語る彼女とSさんに、別々の場で同じ質問をしたところ同じ答えが返ってきたのが驚きだ。

”どこに住むか?が大事なんですよ”

住む国を変えるという大きな判断を都度してきたのだ、普通の日本人の見方からすれば並みの判断ではないと思う。様々な悩みや考えがあっただろうと思ったが、その生き方の選択の基準に、2人は”Where we live”をシンプルに挙げる。 「あなたにとって1番大切なことって何かな?」そんな会話を互いに自然と重ねるのだそうだ。

マルチカルチャーな世界を体感してきた2人。その生きてきた環境そのものが、まさに彼らのメンタリティを創ってきている。そう考えると、”Where we live”が2人の生き方の基準であるという事も、この2人には自然な答えなのかもしれない。それは単なる言葉ではなく、2人が共有してきたコンテキストが詰まっている、特別な拠りどころなのだから。 Kuni


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